日程:第六回近畿認知療法・認知行動療法学会 - CBTを学ぶ会

タイムスケジュール、内容・抄録:第六回近畿認知療法・認知行動療法学会

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タイムスケジュール

内容・抄録

  

タイムスケジュール(予定)

9:30-開場・受付開始
10:00-10:05事務連絡
10:05-10:10開会挨拶 井上和臣@内海メンタルクリニック・認知療法研究所
10:10-特別講演1【"推し"BON認知療法】 井上和臣
-11:10特別講演2【古人の求めたるところ ジャクソンの「神経系の進化と解体」の理論に基づく『モード理論』再考】井上和臣
座長:尾関 祐二@滋賀医科大学精神医学講座教授
11:15-12:45シンポジウム【コメディカルの現場から学ぶ認知行動療法】 (90分)
オーガナイザー:川野直久@滋賀里病院(看護師)
堀江明宏@長浜赤十字病院 精神科(看護師)
南出耕佑@嶺南こころの病院(作業療法士)
久郷 真人 @滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部(理学療法士)
司会:若井貴史@哲学心理研究所
12:45-14:00昼休憩(75分)
14:00-15:00会長講演  【認知行動療法における事例報告】 (60分)
西川公平@CBTセンター/一般社団法人CBTを学ぶ会
司会:岡本章宏@嶺南こころの病院
15:05-16:55認知行動療法のロールプレイと模擬面接 (110分)
司会:西川公平、川野直久
16:55-17:00閉会の辞 須賀英道@龍谷大学
17:05-17:10写真撮影、事務連絡
18:00-20:00懇親/情報交換会(事前申し込み)
  

内容・抄録(予定)

特別講演1【"推し"BON認知療法】 井上和臣Aaron T. Beck, M.D. の1周忌に当たる2022年11月1日に,認知療法研究所「文書館」活動の一環として『認知療法ライブラリー』を開設しました。
『認知療法ライブラリー』は,わが国で出版された認知療法・認知行動療法関連の書籍について,その収集と保存・管理を念頭におくものです。
著訳書は1980年代後半から公にされてきましたが,すでに30年以上を経て入手困難なものも存在しています。できるだけ多くの書籍を遅まきながら収集することが第一歩となります (https://utsumi-mcl.com/cbt/文書館/1352.html)。
開設から2年の時点で,蔵書は270点を数えています (著書142点,訳書128点)。
その中から以下の3点を“推し”Bon認知療法としてお薦めします。
1. 認知療法―精神療法の新しい発展. アーロン・T・ベック(著) 大野 裕(訳)岩崎学術出版社 1990.
2. 認知療法への招待. 井上和臣(著) 金芳堂 1992/1997/2002/2006.
3. リカバリーを目指す認知療法―重篤なメンタルヘルス状態からの再起―.アーロン・T・ベック, ポール・グラント, エレン・インヴェルソ, ほか(著)大野 裕, 松本和紀, 耕野敏樹(監訳) 岩崎学術出版社 2023.
特別講演2【古人の求めたるところ ジャクソンの「神経系の進化と解体」の理論に基づく『モード理論』再考】井上和臣ずいぶん前のことになります。まだ国際学会に参加していた頃でした。
認知療法の創始者アーロン・T・ベック (Aaron T. Beck, M.D.: 以下,Dr. Beck) が,精神療法の基本要件をこんなふうにまとめていたと記憶しています。
1. パーソナリティと精神病理に関する理論を基礎とすること
2. 理論の妥当性を支持する知見が存在すること
3. 理論との整合性を有する治療技法の選択がなされていること
4. 治療の有効性を支持する科学的根拠が蓄積されていること
これら4か条をすべて満たすと思われる認知療法 (cognitive therapy) は,精神療法の一体系 (a system of psychotherapy) とされています。
科学的根拠・エビデンスに基づく医療 (evidence-based medicine) という潮流のなか,認知療法は効果の実証された精神療法 (empirically supported psychotherapy) としての地歩を確実にしています。
しかし,私見ではありますが,実臨床に欠かせない有効性・安全性や多彩な認知的・行動的技法以上に,認知中心の理論 (cognitive theory) が認知療法をもっとも特徴づけるものなのです。
本講演では,Dr. Beck の初期理論である認知モデル (cognitive model) から後期のモード理論 (theory of modes) への発展を略述するとともに,19世紀のイギリスの神経学者ジャクソンの「神経系の進化と解体」の理論を援用し,モード理論について新たな視点を提供することを試みます。
特別講演2の紹介動画1「モード理論とは?」(3:30)
特別講演2の紹介動画2「ジャクソン理論とは?」(4:00)
シンポジウム【コメディカルの現場から学ぶ認知行動療法】 (90分)日本で認知行動療法(以下CBT)を実践している職種は学会の会員の比率からも心理職、医師が中心であり、看護職や作業療法士、理学療法士、精神保健福祉士などのコメディカル実践者は少数である。
研修会等で同職種と会うことも僅かで、さらにCBTを実践している同職種はSSRのレアキャラである。
今回はレアキャラ4人が各自の職場環境において、周囲の理解を得る所から、CBTの提供や運用方法を試行錯誤しながら実践しつつ、時に学会発表や事例発表など行い自己研鑽に励んでいる。
そんな、レアキャラにふさわしい「高い経験値」を今回の発表で紹介したい。各人の発表は、
・精神科単科の外来で診療報酬加算しながらC B Tを実践している立場から(川野)
・児童思春期支援指導加算が新設されたことを受け、看護カウンセリング「精神科生活支援外来」を開設した立場から(堀江)
・精神科作業療法のプログラムに認知行動療法のエッセンスを導入し、集団に対し活用している立場から(南出)
・痛みセンターで心理師が行うC B Tを参考にリハビリ現場で外来運動療法にC B Tのエッセンス取り入れている立場から(久郷)

そして、この経験値を参加者と共有することは
① 同じコメディカルの人達にC B Tへの興味を持てるきっかけ
② 医師や心理職の方々と協働するポイントを抽出し、臨床へのヒント
この2点に繋がればと考えている。
ぜひ、この希少なレアキャラ達の集いに参加してみませんか?
会長講演  【認知行動療法における事例報告】 (60分)認知行動療法ではしばしば事例報告されることがあるが、それらはどのような営みなのであろうか?
事例報告について、その歴史、その役割や機能、その広がりについて報告することを目的とする。
事例報告は、臨床経過についてまとめて10-60分程度の幅で報告するものであり、ケーススタディーとも、症例検討とも呼ばれる。またそれらを論文にしているものもある。
1事例の報告なのでエビデンスのレベルは低い一方で、手続きが詳細に書かれていることもあって、自分が不慣れな症例を担当する際に手取り足取り参考になり、具体的で重宝する料理のレシピのようなものである。例えば、今まで自己臭恐怖を担当したことがないカウンセラーの元に、その患者さんが来たとき、RCTでエビデンスを調べて治療方法の方向性を探ると同時に、自己臭の事例報告を何篇か見て、治療のおおよその雰囲気をつかむといった感じで利用される。
しかし多くのセラピストにとって事例報告は必須ではない。公認心理師も臨床心理士も、事例報告の必要性なく取れる資格である。いくつかの資格(専門行動療法士など)にケースレポートを必要としているものもあるが、そもそも資格自体が働くうえで必須ではない。ゆえに、一度も事例報告をせずに一生を終えるセラピストもいるだろう。
事例報告自体は、日本の認知行動療法の発展の中で必然的になされていた。認知療法研究、行動療法研究、精神神経学雑誌、精神医学雑誌などの文献を紐解いていっても、認知行動療法の事例報告はずいぶん遡って散見される。
いったいいつごろから、どのようなテーマで日本の認知行動療法は事例報告されてきたのか、文献調査をもとに報告したい。
また演者は学会や、地域の勉強会などで、これまで多くの事例報告を行ってきた。それら事例報告をまとめることで、演者自身が事例報告に求めていたものが何だったのかを俯瞰したい。そして、認知行動療法を習熟していくうえで、事例報告が持つ意義について語りたいと思う。
認知行動療法のロールプレイと模擬面接 (115分) 認知行動療法を習得するための方法は様々用意されている。認知行動療法について書かれた書籍の充実はとどまるところを知らないが、現在ではさらに、動画で学べる教材なども充実の一途をたどっている。
昔からやられている方法で、陪席や録音・録画、文字起こしといった方法もある。これらはクライアントさんに許可をもらったり、手間暇がかかったりするものの、やるだけの価値がある習熟方法であると言える。特に厚生労働省認知行動療法研修事業においてはスーパービジョンを受けるに際し、録音データの提出および認知療法尺度CTRSの評点が求められるなど、録音録画はそのトレーニングにおいても一定の地位を認められていると言える。
さて、実際の面接を観たり観られたりには、いくらかハードルが高いところがあり、時には侵襲性も生じてくる。そこで、認知行動療法の一種であるSSTでもやるようなロールプレイや模擬を用いた少し気軽なトレーニング方法が代替手段として用いられることがある。
このセッションでは、いくつかのよくある困りごと(不眠や不安)を呈しているクライアント役の方に、セラピスト役の方が対応するロールプレイと、それらの見本としての模擬面接によって構成されている。
認知行動療法に限らず、技術の習得というものは本で読み、動画で見て分かったような気になったとしても、いざやってみると畳の上の水練が如く、しどろもどろになってしまうこともなくはない。大会のテーマである「ときに習う」ことも必要なのである。