ワークショップ:第六回近畿認知療法・認知行動療法学会 - CBTを学ぶ会

ワークショップ:第六回近畿認知療法・認知行動療法学会

ご挨拶 |  学会日程・内容 |  開催会場 |  参加費・無料特典 |  申込、締切 |  ワークショップ |  その他・問合せ | 

ワークショップのお申し込みはSTORES経由で下記URLからお願いします。
3/22当日お越しになれない方でも、大会参加されない方でも、ワークショップ配信単独でご参加いただけます。
STORES https://cbtwomanabukai-2.stores.jp/

録画ワークショップ

本学会では多数の録画配信ワークショップを取り揃えています。

No. タイトル 時間 講師 所属
WS1 心身の痛みに対する認知行動療法 4h 水野泰行 関西医科大学心療内科学講座/関西医科大学附属病院痛みセンター
本ワークショップはすでに慢性疼痛診療に関わっている、あるいはこれから関わる可能性のある、もしくは興味のある心理職や療法士、医師などを対象として、慢性疼痛の基本的な知識や認知行動療法(CBT)の実践的な方法を理解してもらうことを目的とする。
慢性疼痛とは3ヵ月以上続く、もしくは繰り返し起こる痛みで、通常は痛みに見合うだけの客観的所見に乏しい慢性一次性疼痛を指す。痛みに限らず、このように自他覚が乖離した身体症状は機能性身体症候群とよばれ、注射や投薬など治療者に「やってもらう」治療よりも、運動療法や心理療法など患者が主体的に取り組む治療が効果的であると言われている。
実際、慢性疼痛診療ガイドライン2021でもCBTはエビデンスレベルB(中等度)、推奨度2(弱く推奨)であり、これは腰痛に対するNSAIDsやSNRI、トラマドールと同レベルである。また推奨度1(強く推奨)の運動療法はCBTと非常に相性の良い治療法であり、運動療法を取り入れたCBTは慢性疼痛領域では今や標準的な治療と言える。
しかしながら本邦の診療報酬制度では慢性疼痛に対するCBTは保険収載されていない上に、医学教育においてCBTを学ぶ機会は皆無と言ってよいので、医師が質の高いCBTを実践できる環境にはない。一方、心理職は教育課程で解剖生理学や身体疾患の医学を学ぶ機会は極端に少ない。そのため心理療法に精通した専門家でも、身体疾患としての慢性疼痛に対処するには困難を伴う。
現在、本邦で標準とされているのはいわゆる第二世代のCBTで、かつ行動療法の要素が強い。そこではしばしば、痛みがあっても動くようにする、痛みそのものの軽減を目的としない、痛みと付き合いながら生活の質を高めるといったことが強調されて、患者の納得や人生における価値といったものに焦点が当てられることは少ない。
慢性疼痛は不安症やうつ病といった精神疾患に比べて、一般の人々のみならず医療者の間でも認知度が低く、急性疼痛との病態や治療の違いはほとんど知られていない。そのため他の疾患以上に、治療者による病態説明と患者側の理解が重要となる。つまり技法以前の心理教育や動機づけが不可欠であり、そういう点では他の心理療法や運動療法と同様である。
今回のワークショップでは、社会や医療における慢性疼痛の位置づけ、心身医学から見た慢性疼痛の病態、慢性疼痛の心理教育やCBTとそれを実践するためのコツなどを解説する。これが近畿地区さらには全国の慢性疼痛診療の質の向上に貢献できれば幸いである。
WS2 児童思春期の現場で活かせる!スキーマ療法の考え方と関わり方 4h 森本雅理 洗足ストレスコーピング・サポートオフィス/目白ジュンクリニック/公立学校スクールカウンセラー
スキーマ療法とは,米国の臨床心理学者ジェフリー・ヤングが1990年代に提唱した認知行動療法の発展型の心理療法である。ヤングは,複合的な心理学的問題に対する治療法として, CBTを中心に,アタッチメント理論,力動的アプローチ,構成主義,ゲシュタルト療法,感情焦点化療法などを統合させ,スキーマ療法を構築した。
スキーマ療法は,その後20年以上にわたり,今もなお発展し続けており,その適用は医療領域にのみならず,教育,福祉,司法など,様々な領域に広がっている。
認知の中でも特に深いレベルの認知構造を「スキーマ」というが,スキーマ療法における「スキーマ」とは,思春期までの間(人生早期)に重要他者との関わりの中で作られ,その時には助けとなっていたが,その後その人を生きづらくさせるようになったスキーマの総称,「早期不適応的スキーマ」のことである。
早期不適応的スキーマには,例えば,「欠陥・恥スキーマ」(「私には致命的な欠陥がある」)や,「不信・虐待スキーマ」(「みんな敵だ。誰も信じてはいけない」)などがある。個別のスキーマ療法の場合,十分な安全を確保した上で,これらのスキーマの成り立ちやメカニズム,その影響などについてクライアントと一緒に検討し,アセスメントしながら,スキーマの変容を目指していく。
演者は,個別のスキーマ療法を学び,実践する一方で,スクールカウンセラーとして,子どもや保護者,教員と関わってきた。その中で,次第に学校現場にスキーマ療法の考え方や関わり方が非常にフィットするという感触を抱いてきた。成人のスキーマ療法の場合には,「できあがったスキーマがどのようなもので,それをどうしていくと良いのか」という考え方になるが,子どもと関わる現場においては,「そもそもスキーマを作らせないためにはどうしたら良いのか」という発想になる。
学校現場では,個別臨床とは異なり,その方の実際の生活状況などについての基本的な情報すら共有されていないにも関わらず,瞬間瞬間の変化に対応を迫られることが多い。その際に,スキーマ療法の考え方や関わり方が大いに助けとなり,介入が外れにくくなる実感がある。また,その周囲の保護者や教員にもアプローチすることにより,間接的に継続的な介入をすることが可能になる。
本ワークショップでは,学校での事例を交えながら,スキーマ療法の理論について紹介し,実際の現場ではどのように活用できるのかについてお伝えしたい。特に,全ての早期不適応的スキーマやアンヘルシーなモードの根本にある「中核的感情欲求」について紹介し,どのようにスキーマの形成を阻止していくのかについてお伝えしたい。学校現場のみならず,例えば児童相談所や,短期的・部分的にしか子どもと関わることができないような現場で活動する方々の参考になれば幸いである。
WS3 ソクラテスの質問法 4h 若井貴史 哲学心理研究所
認知療法・認知行動療法において、患者の認知を変えるためには、特有の質問をすることが大切であるとされている。この質問は、古代ギリシャの哲学者に因んで、ソクラテスの質問法と呼ばれている。ソクラテスの質問法の利点について、ベックらは、治療者がいない時でも患者がこの種の質問を自分自身で行うことができること、つまり、患者が自問自答できるようになることにあると指摘している(Beck et al.,1979)。
これは、治療者がくり返し質問することで患者の中に問いが内在化するため、その後は自問自答することによって、自分で自分に認知療法・認知行動療法を実施できるようになるということを意味すると考えられる。
 ところが、このソクラテスの質問法について、臨床的・実践的な観点から詳細に論じられている論文や著書は極めて少ないのが現状である。そこで本ワークショップでは、若井(2014)で類型化した以下の6つの質問を中心に取り上げる。
①捨象情報を問う②根拠を問う③例外を問う④程度を問う⑤差を問う⑥別の立場を問う
 これは問う対象に応じて整理した私案であり、ソクラテスの質問法の基本技にあたると考えているものである。これらがそれぞれどのようなものであるのか、どのような目的・機能を有しているのか、したがってどのような場面で使うと効果的なのかを紹介する。そのうえで、具体的なモデルケースをとおして、これらの基本技の形をしっかり習得していただくことを目指したい。
 若井(2022)で触れたプラトンの原典を紹介し、ソクラテスが実際にどのような対話をしていたかを確認したり、ソクラテスの質問法の弁証法的・認識論的意義について解説したりすることも検討している。ただし、時間の都合でこれらに触れられない場合、関心のある方は若井(2022)を参照していただきたい。
 本ワークショップの対象者としては、認知再構成法の大枠は理解している初学者から、臨床上認知再構成法を使ってはいるが、なかなかうまく使いこなせていないと感じている中級者レベルまでを想定している。
<参考文献>
Beck, A. T., Rush, A. J., Shaw, B. F., & Emery, G. 1979 Cognitive therapy of depression. Guilford Press. 坂野雄二(監訳) 1992 うつ病の認知療法 岩崎学術出版社
若井貴史 2014 三浦つとむの認識論から見る認知療法の作用機序 『季報唯物論研究』第126号 pp.106-111
若井貴史 2022 弁証法・認識論から説く認知行動療法入門(3) 『自由学藝』第3号 pp.139-159
WS4 児童青年期における摂食症の臨床:家族をベースとする治療を実践するには 2h 鈴木太 上林記念病院こども発達センターあおむし/福井大学子どものこころの発達研究センター 地域こころの支援部門
回避・制限性食物摂取症 avoidant/restrictive food intake disorder (ARFID)、神経性やせ症 anorexia nervosa (AN) は低体重や低栄養を引き起こす精神障害であり、摂食症に分類されている。一般人口におけるARFIDの有病率は0.3から15.5%と高い(Sanchez-Cerezo et al.,2023)。これらの摂食症は低体重に代表される明白な身体徴候、偏食、少食、食物回避などの特徴的な行動を伴い、診断は容易であるが、その概念は十分に普及しておらず、見過ごされてきた。
2020年から始まったCOVID-19パンデミックでは、ソーシャルメディアの利用が活発化して、児童や青年における摂食症が増加し、重要な臨床的課題となった(Schlissel et al.,2023)。
自閉スペクトラム症の8から55%、不安症の9から72%がARFIDを併存すると考えられている(Sanchez-Cerezo et al.,2023)。摂食症を早期にアセスメントして、摂食症に焦点づけた高強度の治療を提供することは、自閉スペクトラム症や不安症を伴う児童や青年を支援する際の重要な要素であるが、年間12万人強の子どもが出生する関西2府4県において、日本児童青年精神医学会認定医はわずか135名であり、治療者は深刻に不足している。
この講義では、児童青年期における摂食症のアセスメントについて解説し、摂食症を対象とした家族療法である「家族をベースとする治療 family based treatment (FBT)」の適応、治療構造、技法について「神経性やせ症治療マニュアル 第2版」「Family-Based Treatment for Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder」の記述を参考として紹介する。FBTに限らず、摂食症の臨床はチーム医療が基本であり、児童や青年に関わる公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士、看護師、栄養士、医師、教師を想定した多職種連携についても触れる。
WS5 援助要請と認知行動療法―「助けて」が言えない子ども,「助けて」が届かない社会に向けた援助要請スキルの実践― 2h 本田真大 北海道教育大学
支援者が対象者(子ども,大人)に「相談できるようになってほしい」と思うことはあるでしょう。「人生を送るうえで,人は誰かに相談できる方が良い」という考え自体を否定する人は少ないと思います。では,「相談できる」とは具体的にどうすることでしょうか。行動で記述してみると,「困ったら一人で抱えずに相談する」「つらくなる前に身近な人に助けてと言う」「一人だけではなく複数の人に相談できる(複数の相談相手になり得る人とよい関係を築く)」等が考えられます。一方で「自分で考えずに何でも人に相談するのはよくない」「相談して解決したら,後は自分で問題に取り組んでほしい」と考える人もいるでしょう。一見して支援者の多くが共有できそうな「相談できるようになってほしい」という言葉には,実に様々な認知や行動が含まれています。
悩みの相談に関する認知や行動は「援助要請(help-seeking)」と呼ばれ,メンタルヘルス領域の研究では過少性(ニーズがあっても相談しない(ためらう,できない)),過剰性(相談しすぎる),非機能性(相談がうまくいかない)の3点が研究されています。これらは独立した概念ではなく,行動が少なすぎれば増やしたいが多すぎても困る(過少性-過剰性),相談したが悪い反応が返ってくる(怒られる,秘密をばらされる等)と今後相談する行動が生じにくくなる(機能性-過少性)というように,臨床では3つの概念を同時に見ながら介入を計画する必要があります。その際に有用な概念が援助要請スキルです。
本ワークショップでは援助要請スキルの研究成果とアセスメント,介入方法の現状を紹介します。援助要請スキルの研究と実践は国際的にも未だ十分確立された水準にはありませんので,現状の研究動向や実践例を知り,参加者各自の臨床で「相談できるようになってほしい」対象者に,認知行動療法の技法をどのように活用できるか考えることがワークショップのねらいです。主に児童青年期を対象とした支援者(心理士等)や支援者をめざす学生を想定したワークショップです。
WS6 身体症状に対する認知行動療法の導入とコミュニケーションのコツ ―疲労,めまい,耳鳴を中心に― 2h 姜静愛 認知行動療法カウンセリングルームFig lab
慢性的な疲労感やめまい,耳鳴りなどの身体症状は臨床現場でも多く見られる訴えです。それではそうした身体症状を抱える患者への支援において,治療者は患者の状態をどのように理解し,アプローチすべきでしょうか。身体症状は単なる身体的不快感にとどまらず,日常生活や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。さらに,症状の慢性化は身体的健康だけでなく,心理的健康にも深刻な影響を与えることがあります。
DSM-5における身体症状症の定義では,日常生活に支障をきたす身体症状(A基準)と,それに付随する過剰な思考,不安,行動(B基準)が主な特徴とされています。この特徴は,CBTの基本となる「認知・感情・行動・身体」の相互作用モデルによって理解することができます。実際,RCTを対象としたメタ解析では,CBTが身体症状の重症度や,抑うつ・不安症状の改善に有効であることが示されています(Van Dessel et al., 2014; Liu et al., 2019)。
CBTによる介入では,身体症状への過剰なとらわれを軽減し,生活の質を向上させることを目指します。特に重要なのは,症状に対する破局的な思考が感情や行動に与える影響に焦点を当てることです。また,身体感覚への過度な注意が症状を増幅させる可能性があることから,注意の適切な配分を促すアプローチも含まれます。
しかし,身体症状症の患者の多くは心理的介入に抵抗感を持つことがあり,治療同盟の形成に困難を感じる場合があります。そのため,治療者には患者との信頼関係を丁寧に築くためのコミュニケーションスキルが求められます。
本ワークショップでは,疲労感,めまい,耳鳴りなどの症状を例に,CBTの視点から身体症状を理解し,介入する方法を学びます。具体的には,症例の概念化の方法や,患者とのコミュニケーションの取り方について実践的に解説します。
国内では慢性疼痛や耳鳴に対する治療ガイドラインでCBTが強く推奨されているものの,この分野の専門家は依然として不足しています。医療経済的な観点からも,包括的な治療アプローチの確立が求められています。本ワークショップを通じて,身体症状への介入スキルを持つCBT実践家が増えることを期待しています。
対象は,医療従事者(医師,看護師,理学療法士など),心理職(臨床心理士,公認心理師など),教育や福祉分野で心理的支援を行う専門職の方々,支援者を目指す学生を想定しています。
WS7 認知行動療法におけるケースのまとめ方、事例報告のやり方 2h 西川公平 CBTセンター/一般社団法人CBTを学ぶ会
こころの困りごとを扱うものにとって、いまや認知行動療法は人口に膾炙している。しかしながら、中々に日本の認知行動療法家は習熟していかない。これは認知行動療法熟達のプロセス「事例をまとめて、どこかで発表する」がなされないからだ。
自分のやっていることが認知行動療法で合っているのか?違っているのか?認知行動療法風なのか?風ですらないのか?To be? or not to be? that is the question!
多くの心理療法はクローズな中で進行し、陽の目を見ることがない。よほどの失敗でない限り、永遠に続いていても、ひっそりと中断していても、特に誰も何も言わない。認知行動療法の施術に対して、世間からの期待も責任も大してかかってないことは、幸いとも残念ともいえる。
だから自分のやっている治療的な介入が、はたしてどれほど役に立っているのか、どれほど役に立っていれば一人前といえるのか、判らないままに年を経て、徐々に面の皮厚く開き直ってくるばかりである。
そんな見えない二者関係の世界であるところの心理療法を、ある意味公に、つまびらかに、オープンにしていく行為が事例報告である。それはある意味恐怖体験ともいえる。
しかし一方で、認知行動療法はこれまで「やり方を教える」という心理教育を丁寧に行ってきた。そこで今回事例報告をするにあたって、どのようにケースをまとめて報告するとそれっぽいかについて、100を超える事例報告を行ってきた、事例報告フリークである演者が、そのコツについて語ろうと思う。
以前にこのワークを行ったところ、事例のまとめ方のみならず、臨床そのものが丁寧に、具体的に、有意義になったという感想をいただいた。
それは本当にそうで、事例をまとめることによって、はじめて自分の臨床と向き合うことができ、事例を理解するうえで何が必要な情報なのか、セラピストの意図するところを体現する介入とは何なのか、クライアントが本当に必要としていたものは、などケースについてのメタ的な認知が構成されるからだ。
そんなわけで、臨床が上手くなりたい人は、本を買ったり、ワークショップに出たりせずに、自分のケースをまとめることをお勧めするし、そういったプロセスを営んだことがない人のための第一歩になれば幸いである。
WS8 作業療法士の仕事に活かせる、認知行動療法のエッセンス 2h 岡本利子、南出耕佑、他 嶺南こころの病院、福井CBTを学ぶ会
・精神科作業療法における、あるある場面を紹介して、どのように認知行動療法を使用しているかを実践紹介します。
・その実践を知ることで、視点や関わり方といったリソースが増えることを期待します。
・対象者を認知-行動モデルで理解することで、その行動に至った思考過程を把握することができるほか、考えの癖や行動パターンの把握にも寄与し、今後起こすであろう、対象者の行動予測をたてることも可能となります。
・日々の連続した関わりの中で、経験則で評価や介入方針を立てるのではなく、認知行動療法モデルを使用した評価・介入を行えるようにする。
・精神科作業療法士は、2時間で25人の大集団を扱うため、雑多になりやすい。その特徴を踏まえて、短い時間で使用できるもの、シンプルな物をシェアしたいと考えている。そのため作業療法士に限らず、多職種の参加をして頂きたいと考えている。